見る人の心をざわつかせる程までに独特すぎる
ヘタウマ画風の女流漫画家・。2014年「雨
傘運動」の最中に、反体制派政治団体の出版部
門「熱血時報」に請われ、当時刊行の週刊漫画誌
「Passion Teens」に連載した見開き漫画を単行本
化。

  御本人はたいへんな美人だというのに、みっともない老婆と
なったみずからの30年後、50年後の姿をとおして、微妙なディ
ストピア化した香港社会の未来予想図を描く。現実がすでに
彼女の描くカオス＆ディストピアを凌駕しているという気もする
が…夢も明るさもない未来図は、かえってサッパリとした感興
を呼ぶ！？

  シニカルなアラサー女性の描写で熱い支持を集
める、2020夏の新作はやはりコロナ禍が
テーマ。２〜３ページのショートエピソードで、コロ
ナへの恐怖と不安、孤独や寄る辺なさを、救いなく
淡々と描く。

  もともと若い女性の矛盾や不公平、不平不満を一切オブラ
ートに包まずさらすのが彼女の「芸風」。その筆で未曾有の災
厄・コロナウイルスとそれに翻弄される人々を描けば……客が
来なくて時間の長さを知るコスメ販売員、ユーチューバーに転
身したくてもそのtalent(才能)もないタレント、モノ不足のなか
必死で猫缶を手に入れる退勤後のＯＬ、室内で必死にワーク
アウトしても痩せられないダイエット女性。あまりに突き抜けた
暗さに、すべてがブラックジョークにさえ見えてくる。見せかけ
の「ウイルスに打ち勝とう！」「希望を持とう！」というかけ声を
すべて蹴散らす、超パワフル・コロナ実録漫画。

  イイ男に出会いたい、ひとりじめしたい、いつで
も寂しさを埋めてほしい、でも別れて我に返ると自
分のイタさに消えてしまいたい…いつの時代も女
心は同じ。しかしそこに、即レスや承認欲求充足
をかなえてくれる厄介な存在・スマホとSNSが加わ
ると…女心のめんどうくささは増すばかり。独特の
ヘタウマ絵柄と社会風刺、若い女性の生態描写で
カルトな人気を誇るの、集大成ともいえる
ブラックユーモア短篇集。

  彼氏からのレスを一日中待ち続け、寝落ちしたところへつい
に着信音。ドキドキしながら画面を開いたら通販サイトのバー
ゲンDMだった…そんな経験ありませんか？香港も同じなんで
すね…容赦なきまでにクールな「あるある」系ブラックユーモア
がめじろおし！

  独特すぎるヘタウマ人物画、クールで辛辣な生
活描写で、アラサー香港人の絶大な支持を受ける
女流漫画家・。ニュージーランド旅行記エ
ッセイ＆漫画が到着！

　往復路のみNZ航空がスポンサーにつき、プレミアムエコノミ
ーの旅を楽しんだものの、着いてからは相部屋のユースホス
テルを渡り歩く貧乏ロード。「ロビーが汚い」「Wi-fiがない」とさ
かんに愚痴りながら旅は続く。同宿人や、現地で再会した旧
友の描写も至ってクール。スカイダイビングなどのアクティビテ
ィーもひととおり試すが、その筆致はひたすら淡々としてオフビ
ート。かつての向田邦子の旅エッセイを思わせるビター＆ロー
テンションぶりだが、そこが現代香港人にウケる秘訣かも？と
思わせる一冊。

　文字多め、筆者撮影と思われる写真多め（なべて暗めの画
調）で漫画＆イラストは少なめだが味わいは深い。なお「新
西」＝ニュージーランド。「西遊記」とはまったく関係ありませ
ん。