Stella So、恒例の身辺雑記4コマエッセイ漫画集、
2024-25年夏の巻。

　

  タイトルの「敏感」･･･香港にはふたつの意味がある。ひとつ
は蕁麻疹、鼻炎などを引き起こす「アレルギー」の意味。そし
てもうひとつは･･･「それは『敏感』な話題だよ」といって口をつ
ぐむ、香港人を縛るみえない鎖の意味。表紙はちょっぴりエッ
チな想像をさせるけど、中身は実はそれとなく「もうひとつの意
味」にふれている。いまの香港人の気分をよく体現した一冊。

  とはいえ波瀾万丈（！？）の日常ももちろん活写。20年間連
れ添った愛猫「丁丁」が虹の橋の向こうにお引っ越し。その後
ネズミの出没に悩み、新たな子たち「蛋蛋」と「花花」を迎え、
まだ幼い蛋蛋の「狩り」成功に感動する、など･･･セピア色基
調の彩色もグッドセンス。

   当作は四部構成。お料理に目覚め、母に教わって香港伝
統料理を次々作る「単身食堂」の章、ベランダ農園に目覚め
次々に種をまき苗を育て、果てはコンポストでミミズ養殖にま
で手を出してしまう「城市村姑」の章、屋外作業をしていると出
会う鳥、虫、動物たちの仔細観察エッセイ「神秘的隣居」の
章、雑多な身辺記録「電波老少女」の章。

  どれも一見ヘタウマなギャグ絵に見せかけて、動物や植
物、食べ物や道具のスケッチが驚くほど精密仔細。さすが「粉
末都市」や「好鬼桟」で見せつけた鬼の描画力の持ち主。
2015年刊行作品でありながら、コロナ禍ほか諸々で疲れた香
港人のナチュラル回帰ブームを予見するような慧眼の一冊。

　

  「老少女」とはそのまんまの意味、要するに少女を引きずっ
ちゃった未婚アラサー女子。身もフタもなく自らをそう呼ぶＳｔｅｌｌ
ａ　Ｓｏがカラダを張って「女子力アップ」に励み、婚活に励み、
重なりゆく年齢に焦る。あまりに日本のアラサー喪女に近い、
リアルなコミックエッセイに思わず苦笑。海の向こうの香港にこ
んなに共感できる女子がいる。ちょっと勇気のわく一冊です。

香港政府の2022文化支援「港漫動力」プロジェクト
により登場した、Stella Soの「さまざまな理由でこ
の街を離れゆく人たちに贈る」久々の漫画新作。

　

  太平山＝ヴィクトリアピークは、香港の人々の営みをずっと
見守ってきた山。ふもとの通りでクラシックカメラ片手に、街と
人を写してまわる写真家の青年が出会う、三つの物語。

  1932年創業、おしゃれで腕のいい理髪師と5人の徒弟で切
り盛りする理髪店。ある日師匠が怪我で休業することとなり、
残された弟子たちは大あわて！末っ子徒弟はそのとき…？
「ヴィクトリア理髪店の物語」。

  貴婦人に仕える女中の小玲はある日、思い続けていた男性
が別の女と結婚することを知る。復讐に燃えた小玲は…「馬ね
えさんの物語」。

  廟の神さまを守り続けて幾年月、包じいさんは今年も正月
十五日を迎える。利是（おとしだま）をやりとりする人々で賑わ
う廟内。そこへひとりの、貧しい身なりの少女がやってきた…
「包じいさんの物語」。Stella Soの得意技・古き良き香港タウ
ンを背景に、優しく感情豊かな街の人々を描く！

  新聞「明報」2010年連載イラストコラムの単行本
化。新興高層団地と郊外の昔ながらの暮らしが共
存する、新界・天水圍。この街に集い暮らす人々
に「自慢の郷土料理」を聞き、作り方を可愛いイラ
スト満載で紹介する本。

  当書は「華北東南亞＆東欧編」。四川・上海・北京など大陸
西方や北方の料理、そして海の向こうの東南アジア・北欧の
皆さんが登場。お料理大好き、食は笑顔のもと！という、個性
豊かな人々と、その手作りメニューのイラストが満載。総じて
野菜たっぷり、素朴な製法のものばかり。ひとあじ違う料理書
をあなたに！！